東京教育カウンセリング研究所では主に、臨床心理士による個人カウンセリング、トレーニングを受けた学生が家庭を訪問して支援を行うメンタルフレンド、スクールカウンセラーの派遣などで不登校・ひきこもり傾向にある人たちの支援を行なってきました。

ただ、カウンセリングやメンタルフレンドでは、信頼関係の構築や子どもたちが地域や他者と関わりたいという気持ちを育てるのに時間がかかるという課題がありました。また、不登校・ひきこもり傾向のある子どもたちは成功体験が比較的少なかったり、他者とのコミュニケーションをとるのが難しかったり、ソーシャルスキルを培う体験の場が少い傾向にあります。そこで、屋外の開放的な空間で日光を浴びながら体を動かしたり、植物や作物を育てたりすることを通じて、心身の健康回復と社会性の向上を目指すファームセラピーを始めました。ファームセラピーという事業を通して、子どもたちが安心して安全な人たちと一緒に関われる場所を作り、カウンセラーや地域の人たちと一緒に活動することで成功体験を増やし、子どもたちの気づきにつながる体験を培うことができます。そして、結果的に他者とのコミュニケーション能力やソーシャルスキルを育むことができ、子どもたちが社会への一歩を踏み出すことができるようになると考えています。

また、東京教育カウンセリング研究所では一人一人の個性を大切にしています。地域に住んでいる様々なバックグラウンドをもつ人たちとコミュニケーションをとり、一緒に何かに取り組むことによって、「自分を表現してもいいんだよ」「NOと言ってもいいし、言われてもいい」など、自分のペースや個性を大切にすることを不登校・ひきこもり傾向にある子どもたちに知ってもらいたいと願っています。また、様々な人と関われるように、吉川市にある他の不登校・ひきこもりの子どもたちを支援する団体やその他地域に根付く団体と横のつながりをもつことにも意識して取り組んでいます。

不登校・ひきこもり傾向のある子どもは自分の価値観に否定的で繊細な内面を持ち合わせていることが多くあります。自分の家族や身近な人だけではなく、いろんな価値観を持っている子ども・大人・地域の人々と一緒に作物を植えたり収穫したり、焚き火をしてお話しをしたり、料理をして季節を味わったりといったことを通して自尊心の回復に繋がればと考えています。目的をもって何かに取り組むことで、人との関わり方や距離感の取り方を学び、安心して人と繋がって生きていけることを目指しています。